日本人男性の間で前立腺がんが増加傾向にあり、罹患数は増加の一途をたどっています。国立がん研究センターの統計によると、2019年には男性の部位別がん罹患数の第1位に前立腺がんがなっています。(参照:国立がん研究センター「がん登録・統計」) 40代ではまだ罹患率は低いものの、50代以降になると急激に増加し始めます。早期発見・早期治療が重要なのは他の癌と同様ですが、前立腺がんは進行が比較的緩やかな癌であることも多く、早期発見できれば完治も十分に目指せます。
前立腺がんは、かつては欧米人に多い病気とされていましたが、食生活の欧米化に伴い、日本を含むアジア諸国でも患者数が増加しています。特に、40代後半から50代以降の男性は注意が必要です。また、前立腺がんは初期段階では自覚症状が現れにくいという特徴があります。そのため、気づかないうちに病気が進行し、発見時には進行癌となっているケースも少なくありません。
早期に発見し治療を開始すれば、非常に高い治療成功率が期待できるため、定期的な検診が推奨されます。
血液検査で簡単に調べられます
前立腺がんの検査には腫瘍マーカー(前立腺特異抗原PSA)があり、血液検査で簡単に調べることが可能です。
前立腺がんは早期の段階では自覚症状が全くありません。50歳以上になられた方はご自分のPSA値をチェックしておくことをおすすめします。
PSAとは
PSAは「前立腺特異抗原(Prostate Specific Antigen)」の略で、このタンパク質は男性のみに存在する前立腺という生殖器官で生成されます。PSAの主な機能は、精液を薄めて液状にすることにより、精子の運動性を向上させることです。この特性から、PSAは前立腺の健康状態を示す指標としても用いられます。
PSA検査は、あくまでスクリーニング検査であり、確定診断を行うものではありません。PSA値が高い場合は、さらに詳しい検査が必要になります。
前立腺がんは初期段階では症状が現れにくいことが多いですが、進行すると以下のような症状が現れることがあります
前立腺がんの発症には、加齢が最も大きなリスク要因です。その他、遺伝的要素や生活習慣(特に食生活)に影響します。
高脂肪の食事はリスクを高めるとされています。
前立腺がんの早期発見には以下の検査方法が有効です
血液検査を通じて前立腺特異抗原(PSA)のレベルを測定します。高いPSA値は前立腺がんの可能性を示唆します。
一般的にはPSAが4.0ng/ml以上になると前立腺がんの可能性が高くなります。
年齢 | 基準値 |
---|---|
50~64歳 | 3.0ng/mL以下 |
65~69歳 | 3.5ng/mL以下 |
70歳〜 | 4.0ng/mL以下 |
PSA値は、前立腺がん以外の要因でも変動することがあります。例えば、
などが挙げられます。そのため、PSA値が基準値を超えていても、必ずしも前立腺がんであるとは限りません。また、逆に、PSA値が基準値以下であっても、前立腺がんの可能性を完全に否定できるわけではありません。
前立腺がんの診断には、PSA検査だけでなく、他の検査も組み合わせて総合的に判断する必要があります。直腸診、MRI検査、超音波検査などの結果も踏まえ、最終的な診断を行います。
45歳以上の方で症状のある方は保険適用となります
超音波検査は、前立腺の状態を評価する非侵襲的な方法です。この検査では、超音波波を用いて前立腺の大きさや形状を可視化し、前立腺組織の健康状態をチェックします。異常がある場合は、これらの画像から前立腺がんや他の前立腺疾患の兆候を検出する手がかりを得ることができます。
直腸診は、前立腺の物理的な検査で、医師が肛門を通じて指を挿入し、前立腺の大きさ、硬さ、表面の均一性を評価します。この触診により、しこりや異常な硬さがある場合の検出が可能です。直腸診は前立腺の健康を評価するための基本的な方法であり、他の検査と併用することで診断の精度を高めます。
PSA値や直腸診、前立腺超音波検査、MRI検査などによって“がん”が疑われる場合、確定診断をするために、前立腺の組織を採取する「前立腺生検」を行い、がん細胞の有無を病理組織学的に診断します。
※前立腺生検が必要な際は連携病院を紹介します。
前立腺がんの治療は、がんの進行度や患者の年齢に応じて異なります。治療選択肢には以下が含まれます
前立腺を含むがん組織を摘出します。
がん細胞を破壊するために放射線を使用します。
薬物療法でがんの進行を抑制し、患者様の生活の質を向上させます。
有効な新薬が次々と開発されています。当院でもこれらの新薬を導入しており、患者様の治療の選択の幅を増やしています。
進行が非常に遅い場合には、積極的な治療を行わず、状態の監視を続けます。